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2021年4月5日

給湯器トップブランド 「ノーリツ」のマーケティング戦略
~「OneDouga」パーソラナイズド動画でBtoBtoCの課題を解決~
[前編]

ノーリツ集合写真
写真左から株式会社ノーリツ マーケティング本部ブランドマーケティング推進室 宮田朝衣さま、同本部マーケティング企画部 企画室長 清水敬介さま、共同印刷株式会社 OneDougaチームリーダー 磯野周司、同チーム 満尾崇

給湯器のトップブランドとして高い認知度を誇る株式会社ノーリツさまは、住宅分野における暮しの豊かさだけではなく、宿泊・介護施設、工場などの非住宅分野においても、温水事業を中心に、幅広く事業を展開されています。今回は、同社マーケティング本部 マーケティング企画部 企画室長の清水敬介氏に、自社の成長戦略と、今後の展望、さらに共同印刷開発の「OneDougaクラウド」パーソラナイズド動画を、現場でどのように活用いただいているかについて、共同印刷Hint Clip編集長の杉山が取材しました。取材内容は前後編に分けてお届けします。
まず前編では、ビジネスモデルやマーケティング戦略におけるデジタルコンテンツの重要性について伺いました。

ユコアHYBRIDパーソナル動画バナー
https://www.noritz.co.jp/product/kyutoki/hybrid/

ガス給湯器のトップメーカー、ノーリツのビジネスモデル

杉山:まずはノーリツさまの事業概要について教えてください。
清水:事業領域を大きく分けますと3つです。1つ目は「温水分野」で、家庭用と業務用それぞれの給湯器の製造販売。2つ目は「厨房分野」です。これは、システムキッチン用のビルトインコンロやレンジフードなどの製造販売が中心です。そして3つ目が、「アフターサービス」です。製品をお使いいただいているお客さまを対象に、修理・点検などを行います。
現時点での事業の最も大きな柱は「温水分野」ですが、今後のビジネスの展開の起点になりうるタッチポイントとして、「アフターサービス」を、我々は非常に重要視しています。

杉山:貴社の歴史でも、「温水分野」が一番長く、事業の中核になっているのですね。
清水:創業は1951年で、「お風呂は人を幸せにする」という考え方を原点に、風呂釜からスタートしました。この考え方は現在も企業アイデンティティの核になっており、大切にしています。単純に機器を製造して販売するだけではなく、お風呂の価値、入浴する価値を見つめ直して、新しい「入浴文化」を発掘して社会に広めていくことも我々の重要な使命のひとつだと考えています。この取り組みの一環として、水道局や大学生とのコラボレーションした「おふろ部」など、若者の入浴促進につながるようなデジタルコンテンツなどを積極的に配信しています。

杉山:基盤である「温水分野」では、家庭用だけでなく業務用でも新たな事業領域への挑戦をされていますね。貴社の成長戦略についてもお聞かせください。
清水:おかげさまで当社は、国内の給湯器市場で高いシェア率を維持しており、なかでも業務用のシェア率は約6割をいただいています。しかし、日本の国内市場全体の成長は限られていています。今後の企業の持続可能性を考えたうえで、近年は非住宅分野へも力を注いできました。非住宅分野というのは、宿泊施設や介護施設、浴場施設などの商業施設のことで、ノーリツの業務用給湯器は、これらの施設にも大変適しています。
営業中の施設などでお湯を止めないための機器保守点検の推進など、一層のサービスの多様化を図っていきます。

商流はBtoB、コミュニケーションはBtoC

ノーリツ清水さま

杉山:より具体的なマーケティング戦略を伺う前に、まずは清水さまが所属されているマーケティング企画部の業務について教えてください。
清水:基本的にすべての商品企画から販売企画までを受け持つので、バリューチェーンの始まりと付加価値創出の役割を担っている部署です。また、部内には、ブランドマーケティング推進室も設置していまして、主にブランディングからプロモーションまでを担当しています。

杉山:ちなみに一般のお客さまは、どのようなお店で貴社製品を購入されるのでしょうか。ガス機器などの一般的な商流について教えてください。
清水:当社のようなガス機器メーカーは、お客さまに対する直接的な販売はしておりません。ガス器具や住設機器販売店などの住設卸を通して、工務店やハウスメーカーなどがお客さまに販売するという流れが基本となります。
メーカーショールームにお客さまがいらっしゃる場合も、基本的には工務店やハウスメーカーなどからの紹介を受けて来店されます。そこで商品詳細についてご説明したり、ご要望に応じたプランを立てて、その情報を再び販売店へお返しする流れです。
一方で最近は、家電量販店やホームセンター、Web通販店からお客さまが直接購入する流れも出てきました。

[ガス給湯器・住設機器の主な商流イメージ図]  制作:HintClip編集部

ガス給湯器・住設機器の主な商流イメージ図

杉山:商流においてはBtoBが基本ということですが、コミュニケーションはどのような形が求められているのでしょうか。
清水:商流は従来通りのBtoBが基本です。ただ、こうした流通経路の場合、どうしても商品の情報や魅力の伝わり方はどんどん薄まっていきます。伝言ゲームのような状態ですね。ですから近年は、商品情報をよりしっかりとお客さまへ直接お届けするために、WebやSNSでの展開、動画などを使ったBtoCのコミュニケーションやプロモーションにも力を入れています。すでに、社会全体がデジタルコンテンツや動画によって、欲しい情報や商品を見つけていく時代になっていますから。

杉山:コミュニケーションはwebを介したBtoCに変わりつつあるということですね。確かに近頃は、ガス器具販売店や工務店にカタログが置かれる機会も減っているように感じます。現場ではどのようなセールスがされているのでしょうか。
清水:我々の製品は説明が難しく複雑な構造ですから、カタログだけでは、販売店においてもお客さまにおいても、なかなか理解しにくいという課題がありました。
一般家電のように買って帰ってすぐに利用できるわけでもないですし、しかも一度買って設置工事したらおしまいという商品でもありません。長寿命ではあっても、機械である以上、いつかは必ず買い替えなくてはいけません。特に給湯器は、今も「故障買い替え」がまだまだ多くなっています。故障の場合は、すぐに買い替えが必要なので、スピード勝負になります。地域のガス事業者さまがすぐにお客さまの元へ飛んで行って、後継機へ買い替えるというパターンになりがちです。長年使っていただいたお客さまであるにもかかわらず、最適な機種の選択機会が狭められます。当社からすれば商機をロスするリスクも大きくなります。
そこで、流通事業者さまと共に、お客さまへ「故障前買い替え」をご提案することを強化しています。買い替えまでに時間があれば、多様な付加価値の付いた新機種をゆっくり検討していただくことができますからね。そして、こうした提案にこそ、情報伝達力がある「動画」が有効なツールだと考えていました。

[ハイブリッド給湯システムの仕組み図]
経済性と環境性を高い次元で両立させた次世代の給湯機。ガスと電気の二つのエネルギー利用と貯湯タンクを持つことから災害時にも強さ(レジリエンス)を持つ。

ハイブリッド給湯システムの仕組み図

パーソナルな動画でコミュニケーション課題を解決

ノーリツ清水さま

杉山:そういった機会において、デジタルコンテンツが役立っているということですね。
清水:選ぶ側のお客さまはもちろん、売る側にとっても、今やデジタルコンテンツは欠かせない存在です。
工務店やハウスメーカーは、ガス器具以外にも幅広い商品を扱っていますから、あらゆる知識を持たねばならない。必然的に製品知識は広く浅くになってしまいます。一方お客さまにとっても、不具合などが起こらない限り、10年15年は殆ど本体に触れもしない商品ですから、製品知識を更新する機会も少ない。商品動画などのデジタルコンテンツは、そういった両者の架け橋として、リアルな販売機会においても有効に機能してくれます。
今回、共同印刷さんに開発していただいた「ハイブリッド給湯システム」向けパーソナル動画は、それらの最たるものかもしれませんね。メーカー営業担当者の代わりに、製品説明から導入後のコストシミュレーションまで明快にこなしてくれるわけですから。

杉山:この数年でガス機器全体のスペックは一層上がっているので、正しく、簡単に情報を伝えるコミュニュケーションの重要性はますます高まっているといえると思います。
清水:特に環境性能は大きく向上していますし、今後も企業姿勢として追求していく部分です。けれども残念なことに、この環境性能は、お客さまには体験値として伝わりにくいところです。環境性と経済性は一体ですが、「これだけエコになりましたよ」とご説明してもイメージしにくい。「これだけランニングコストが下がりますよ」とご説明すれば、皆さん理解してくださいます。ですが、お客さまごとで使用環境は違いますから、絶対的な数字まではご提示しにくい。ここもまた、当社の課題でした。
パーソナル動画では、お客さまの使用環境、家族構成や居住地区によって異なるシミュレーションが可能です。パーソナルな「商品情報」や「コストシミュレーション」を手軽で提供できることが我々のマーケティング戦略上、大きな武器になると感じ、今回、一緒にトライしてみようと考えました。

杉山:確かに正確な価格差の提示は難しいところですよね。競合他社も、同じような悩みを持っていらっしゃると思います。
清水:おっしゃる通りですが、経済的価値などについてはできるだけ明確にお伝えする工夫が不可欠だと考えています。そういった課題と向き合い続けるためにも、パーソナル動画は重要なツールですね。また、ノーリツの給湯器には除菌ができる製品があります。これも、お客様の目線では効果が分かりにくい(笑)。こうした目では見えにくい付加価値を、営業担当者の代わりに分かりやすく簡潔に説明してくれるアシスト的なコンテンツも、我々や販売店、お客さまにとっても、大変重要です。スムーズなBtoBtoCの関係構築においても、デジタルコンテンツの役割は大きいです。

杉山:このコロナ渦において、デジタルコンテンツはどのように役立ちましたか。
清水:ハウスメーカーや工務店などの展示場などでは、コロナ感性対策として「接客時間」をできるだけ短くしていますが、どうしてもリアルな接客は発生します。
そこで、双方の安全に配慮しながら、できるだけ簡潔なご案内ができるよう、会場にモニターを数十個用意しました。モニターの中にはパーソナル動画やデモアプリなどが入っているので、お客さまはコスト診断や商品動画視聴のほか、実際のお湯張り方法などの使用法も体感できるようになっているので、とても分かりやすいと好評でしたね。

◆後編に続く

ノーリツさまが、新たな領域を切り開くために求められるマーケティング戦略と、デジタルコンテンツの可能性が示唆された貴重なお話でした。
後編では、「OneDougaクラウド」パーソラナイズド動画が、ノーリツさまの戦略に果たした役割と実際の効果を中心に、今後のデジタルコンテンツの可能性についてお聞きします。

ノーリツ清水さま

株式会社ノーリツ
マーケティング本部 マーケティング企画部
企画室長 清水 敬介 さま
2003年 当社入社(宇都宮営業所配属)
2013年 兵庫支店 営業課
2018年 営業企画グループ
2020年 マーケティング企画部 企画室 室長